カメラマン

自分の心を裸にして、 路上で暮らす人々と対峙し、 彼らの生き様を切り取っていく。

カメラマン 砂田 耕希 (すなだ こうき)

Profile
1988年 山口県生まれ。2011年 國學院大学・法学部卒業。2014年 写真家として活動を始める。普段は東京・新宿、渋谷、横浜の伊勢佐木町などを中心に、路上で出会った人々の生活や生き様を切り取っている。2018年4月に自身初となる写真展『それぞれの決壊』を新宿「Beer &cafe BERG」にて開催。

25歳の時に初めてカメラを手にし、写真家として活動を始めた砂田耕希さん。東京や横浜の路上で出会った人々に惹きつけられ、2014年から現在まで、彼らのポートレートを撮り続けています。言葉を交わし、酒を飲み、時には叱られ、時には喜び合い。砂田さんならではの「人間」との向き合い方で切り取られるその作品をみると、忘れかけていた大切な気持ちを思い起こさせてくれます。写真との出会いから、創作への思い、そして自身の集大成となった写真展などについて伺いました。

 

 “「お前、カメラマンになれ」という、リリー・フランキーさんの一言で写真家の道に。”

―まずは写真家になった経緯を教えてください。

大学入学を機に、山口県から上京したのですが、大学時代はリリー・フランキーさんの追っかけをしていました。都内で開かれるイベントにはほとんど足を運んでいました。リリーさんのイベントは明け方までトークが長引くことがよくあるんです。大学4年の秋頃に行ったイベントでも終了時間がかなり押してしまって「終電逃しちゃったな」って思いながら会場付近をふらついていたら、リリーさんが「家くる?」って声をかけてくれて、それをキッカケに目をかけていただくようになったんです。

―そこから写真家にどうつながるのでしょうか?

実は学生時代は、雑誌の編集者になりたかったんです。就職活動ではいろんな出版社を受けました。でもどこにも受からなくて……。ある時、リリーさんの自宅の雑務をしていたら、リリーさんから「お前、大学卒業したらどうするんだ?」って言われて「就職も決まらなかったのでとりあえずバイトしながら、やりたいこと探してみます」って返答したんです。そしたら「じゃあカメラマンになれ」って何の脈絡もなく言われたんですよ。

僕、それまで写真を撮る習慣なんてなかったし、写真展にも行ったことがない、それこそ自宅にあるのはアイドルの写真集くらいで(笑)。戸惑いましたけど、明確にやりたいこともなかったので、ちょっとトライしてみようかなと思ったのが始まりなんです。なぜリリーさんが「カメラマンになれ」と言ったのか、その答えはいまだに出ていないのですが、僕の中にある何かを感じとってくれたのかなとも少し思っています。

 

“路上で暮らす人々をテーマに決めてから、「写真を撮る」以上に大切なことが見えてきた。”

―大学卒業後、写真家として活動を始めるわけですが、どのような写真を撮っているのですか?

大学を卒業してから2年間くらいは、正直、何を撮ったらいいのかまったくわからず、カメラを買ってはみたものの、植物や風景を切り取っても、キレイにいい感じには写るけど、自分の心が全然動かなくて……。悶々とした日々を過ごしている中で、ある時、新宿をふらついていると、路上生活者の方々がふと目にとまりました。

他人の視線を気にせずにわが道を生きる人々をみて「この人たちを撮ったら、絶対に格好よくなる!」と自分の中で表現する必然性というか、使命感みたいなものが湧いてきたんです。それからは時間を見つけては、新宿や横浜の伊勢佐木町などに通って、路上で出会う人々を撮る日々です。

―「路上生活者」という被写体は、難しいテーマのようにも思います。

人間を撮る行為は、被写体のナイーブな部分にまで踏み込まなくてはいけません。だから僕自身も、なるべく心を素っ裸にして、路上生活者の方と向き合うようには心がけています。どう会話の糸口を見つけるか、どう距離を縮めるかということの方が、「写真を撮る」以上に大切なことだと思っています。でも路上生活者というと、もしかしたらちょっと偏った見方をする人もいるかもしれませんが、実際に会って話してみると、とても普通の人々ですよ。

― 他に写真を撮る上で意識されていることはありますか?

人の心のデリケートなところを切り取るというのは、実に加害性のあることです。表現することで相手を傷つける危険をはらんでいます。だからこそ僕は相手と信頼関係を築きたいし、そこに対しての努力は惜しまないつもりです。ですから、隠し撮りはしたくないし、相手が撮られたくない気分なら、無理して撮ることもしません。もう4年以上通っているので、仲良くなれた方もできました。でも、信頼関係ってこちら側が勝手に構築できたと思うべきじゃないというか、それって相手が判断することだと思うので、傲慢にならないようには、いつも注意しています。

 

“「ホームレスを見ているというより、鏡を見ているよう」その言葉に、個展を開催して良かったと心から思えました。”

―2018年4月にご自身初の写真展『それぞれの決壊』を開催されましたが、反響はいかがでしたか?

路上生活者をテーマにした僕の集大成を、写真展というカタチで、新宿駅地下にある「Beer&Cafe BERG」で開催させていただくことができました。僕が大好きな場所でできたこともあって、喜びもひとしおでした。また、いわゆるギャラリーのようなスペースで開いていたら、僕の知り合いしか来てくれなかったと思うのですが、BERGのような飲食店に飾ってもらったことで、お客として来た僕のことを知らない多くの方々が作品に目を止めてくれました。

それでも、個展を開催するにあたっては葛藤もあったんです。というのも先ほども言った通り、表現すること、人目にさらすことで、路上生活者の方を傷つけてしまうんじゃないかと。その迷い、不安は消えることはなかったのですが、それでも「彼ら彼女らの生き様を伝えたい」という使命感が最終的には勝り、開催を決意しました。作品をみてくださったある方が「見ず知らずのホームレスを見ているというより、鏡を見ている感覚になるね」と言ってくださって、その言葉は本当に嬉しかったですし、救われた気持ちになりました。

―素敵な言葉ですね。作品に自分自身が投影されたのでしょうか。他に嬉しかったことはありますか?

写真展を開催できたこと自体が喜びなのですが、あとは写真展を開催したことで、会いたい人に会いに行く理由ができたことが嬉しいです。僕、都築響一さんのファンで、でも「ファンです。会いに来ました」では何も広がらないじゃないですか。だから、写真展が決まってから、都築さんのイベントに足を運んで「こんな写真を撮ってるんです。今度、個展もします。ぜひ見てください」とポートフォリオを持って行ったんです。

そしたらその場で写真を全部見てくれて、その後すぐにメールマガジンで記事まで書いてくださって、ひとつ夢が叶った瞬間でした。あとは、作品を見てくださった出版関係の方から「砂田さんのトーンで写真をお願いします」とお仕事を依頼していただくこともありました。それも写真展をやって良かったと思えた大きな出来事ですね。

 

“評価されるどうこうよりも、表現する意欲だけは忘れたくないです。”

―今後、どういう作品を制作されていく予定ですか。

今のところ、路上で暮らす人々を撮ることはライフワークとして続けたいと思っています。でも、もしかしたら他の被写体に興味を持つかもしれません。さらに言えば「写真」という表現以外の方法になるかもしれません。そこは正直わからないです。ただ、僕の場合、社会的に成功するかしないかよりも、表現すること、創作する意欲を、大切にしていきたいんです。たとえ依頼していただく仕事がゼロになったとしても、その欲求だけは失いたくないです。少し矛盾する言い方かもしれないのですが、自分が創りたいという思いが強い作品ほど、他人に伝わる気もしています。

 

“使いやすくて誰でもキレイに撮れる。オリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M10」はおすすめです。”

―最後に、砂田さんがふだんから使っているカメラについても教えてください。

オリンパスのミラーレス一眼デジタルカメラ「OM-D E-M10」を使っています。このカメラ、とても使いやすくて、誰が撮ってもキレイに撮れます(笑)。僕、カメラに対するこだわりってほとんどなくて、最初はNikonのデジタル一眼レフカメラを使ってみたりもしたのですが、全然思うように撮れなくて……。

でもオリンパスのミラーレスに出逢って、ようやくしっくりくるものが撮れるようになりました。レンズは50mmの単焦点ですが、これもカメラをやっている人だったら「普通だな」と感じるようなものです。道具がどうこうよりも、やっぱり「何をどう撮るか」の方にこだわっていたいとは思っています。

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〈取材・文:寺門常幸(@tera_tsune)/撮影:宇佐美亮(@usamiryo)〉

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