「さかもと助産所」助産師

命の誕生を安心して迎えるために。お母さんのココロとカラダを万全にして、「産むチカラ」を養う、お手伝いをしていきたい。

「さかもと助産所」助産師 坂本 深雪 (さかもと みゆき)

Profile
1965年 東京都出身。1988年 聖バルナバ助産師学院 卒業。助産師免許を取得後、都内の総合病院に勤務。その後、青森県で助産師として働く。1992年に東京に戻り、再び病院での助産師を経て、地域の助産院に約7年間勤務。2001年、東京・東久留米市に自然分娩と母乳相談室をもつ「さかもと助産所」を開業。2003年には、入院施設を持つ助産所としてリニューアル。以来、15年以上に渡り、出産はもちろん産前・産後のケアを通して、お母さんたちの味方であり続けている。「体の不思議」が大好き。

【さかもと助産所】東京都東久留米市小山5-1-35 /TEL&FAX 042-471-0388(電話受付時間:9:30〜16:00)

東京都・東久留米市の住宅街の一角に佇む、さかもと助産所。ここは、自然分娩と母乳相談室、さらには入院施設も備える助産所として、15年以上前に助産師である坂本深雪さんが立ち上げられました。助産所には、坂本さんだけでなく、栄養士さんや先輩ママがスタッフとして働いており、安心してお産を迎えてもらうためのサポート体制が充実しています。そう、出産は、お母さんのココロとカラダのコンディションを整えてく、「さかもと助産所」と「お母さん」の二人三脚の取り組みなのです。またお産後でも、お母さん同士の交流が持てるようにと、様々なサークル活動を行なっているのも、さかもと助産所の特徴で、「お母さんを独りにさせない」「お母さんの居場所をつくる」。そんな、坂本さんの優しさと覚悟を感じさせてくれます。今回は、地域のお母さんと子どもたちが集う賑やかなランチ会の合間にお邪魔して、坂本さんに助産師として、様々なことを語っていただきました。

 

“生物学への関心をキッカケに、命の誕生について惹かれていきました。”

―助産師という職業に興味を持たれたのはいつ頃でしょうか?

高校生の時です。思春期って、胸が大きい子、小さい子、肌が綺麗な子、ニキビのある子、脚が細い子、ふっくらした子など、いろいろな子がいるじゃないですか?それに対して「なんでみんな違うんだろう?」と素朴な疑問を抱えるようになったんです。で、ある時、そのような違いは、遺伝やホルモンが関係していることを、生物の授業で学んで、人体の不思議を面白いと感じたんですよね。

―「生物学」から「助産師」にはどう結びつくのですか?

少し話が戻るのですが、私が9歳の時に、母が妹を精神予防性無痛分娩で産んだんです。つまりラマーズ法です。「ヒー!ヒー!フー!」と出産前の母と呼吸法を一緒に練習したり、お産後に「出産どうだった?」と母に聞いたりしたら、「とても楽だった」と言っていたのを、高校生だった私は思い出して、高校の卒業論文では原稿用紙100枚に、お産についてまとめることにしました。論文を書くためにいろいろ調べていると、「遺伝」と「生命の誕生」とが結びついてきて、これは助産師という仕事がいいかもしれないと思いました。

 

“「助産師になる」。同じ目標を持った友だちと、がむしゃらに勉強した学生時代でした。”

―高校卒業後はどうされるのですか?

助産師の資格を取得するには、まず看護の資格が必要なので、看護の専門学校に入学。でも私は助産師になりたいと決めていたので、看護学校での3年間、モチベーションはかなり低かったです(笑)。

ーそうなのですね(笑)。助産師学校は看護学校と同じところに通われたのですか?

いえ。私は性教育にも関心があったので、性教育に長けている先生のもとで学びたいと考えていました。いろいろな文献を調べていると、大阪の聖バルナバ助産師学院という学校に、私が教わりたいと思った先生がいらっしゃって、そこに入学しました。

―助産師の学校で得られたことはありますか?

そうですね。1年間通ったのですが、助産師の国家資格を取るために、がむしゃらに勉強していた記憶があります。周りの友だちも、みんな同じ目標に向かっている人ばかりだったので、お互いに刺激し合えて楽しかったのですが、とにかく学ぶことがたくさんあり過ぎて大変でした……。あの頃には戻りたくないですね(笑)。

 

“「自分の住む地域に助産所を作りたい」。その想いを叶えるために、腹をくくりました。”

―助産師の資格を取られてからの歩みを教えてください。

助産師学校での学びを終えて、無事、助産師の国家資格を取ってからは、東京に戻り、総合病院で助産師として勤め、その後、夫の転勤で青森県に。青森から再び東京に戻ってからも、都内の病院に勤めました。ですが、病院での勤務は3交代のシフト制で、ちょうど私自身、妊娠・出産を経ていたので、働き方を見直すために、助産所で働くことにしたんです。そこでは、新生児訪問や赤ちゃん検診など、地域のママさんに密着した働き方ができて、やりがいを感じていました。

―「さかもと助産所」を開業されたのは、どんなキッカケがあったからなのでしょうか?

病院で助産師をしていた頃、近所の妊婦さんやママさんに、「自然なお産もできるところもあるのよ」と話をすると「どこにあるんですか?」と聞かれることがあって、でも私の住んでいる東久留米市(東京)には「助産所」がなかったんです……。「それなら私がやろう!」と思ったのですが、開業するということは、すべてのミスや責任が私に降りかかってきます。命を扱っているわけですから、それはやはり怖かったですし、すごく迷いました……。でも、応援してくれる友人や先輩方がたくさんいたことが決め手になって、2001年に「さかもと助産所」を開業。腹をくくりましたね(笑)。

 

“助産師は、お産のサポートはもちろん、女性に関わるすべてのことをケアする仕事です。”

―そもそも助産師はどのようなお仕事なのでしょうか?

産前・産後のママさんのケア、それから正常分娩を取り上げる仕事。さらに、地域との関わりという観点で言うと、育児支援や思春期教育、さらには更年期の女性たちのライフサイクルに対してのケアも行います。

ーかなり幅広いのですね。

そうです。女性に関わること全般と言っていいかもしれません。あとは家族や夫婦のことだったり、今はセクシャリティーの問題もありますよね。例えば、思春期の男の子を持つお母さんが、性教育について悩んでいたり、産後のママさんが夫婦の性生活について困っていたりなど、小児科医には話しにくいことでも、ここには何でも相談に来ます。「母乳相談室」や「みんなDEランチ」といった相談会やイベントを開催しているのですが、これらも、育児や食育について正しい知識を教えたいということももちろんありますが、それ以上に、ママさんが集う場を作り、悩みや愚痴を吐き出してほしいという想いからなんです。だから私、本当は飲み屋をやったほうが向いているんじゃないかと、たまに思うんですよ(笑)。

 

“助産所はメリットもデメリットもあります。ですが、命に、100%安全なんてことはありえないんです。”

―病院と助産所の違いについても教えてください。

さかもと助産所は医療機関ではありませんので、医師は常駐していません。当然、手術室もありません。もし何か起きてしまったら、ここでできることが限られているのは事実です。もちろんお医者さんには定期的に検診に入ってもらい、医学的な観点から検診はしていただきますし、トラブルが起きた際に対応してくれる提携病院もあります。ただ基本的には、お産をするまでの間に、いかにお母さんの健康度を上げていくかが、助産所の大切な役割になります。お母さんとの二人三脚ですね。ですから、大きい病院であれば、強行突破できることも、さかもと助産所では、慎重に判断するように心がけています。

―そういう意味では病院の方がリスクは低いということなんでしょうか?

さかもと助産所に来院してくださった方には、助産所のメリットとデメリットをきちんとお伝えするようにしています。でも命をあずかることにおいて、100%安全なんてことはありえないんですよね。とくに旦那さんからは「助産所はリスクが高いんじゃないですか?」「ここは事故率何%ですか?」ってよく聞かれるんです。

でも、そもそも妊婦さんを扱う数が病院とは圧倒的に違います。それに、例えば、どんなに最先端の安全技術を搭載したクルマだって、突発的な事故は回避できないわけですよね。だから、そのようなリスクに関わる質問には、「すべてを数値でお答えして、理解していただくことは難しいです」と答えるようにしています。男性は頭でっかちになって数値で考えすぎる傾向があります。自分のことじゃないですからね。でも大変な思いをするのは女性であって、陣痛で苦しんでいる妊婦さんは数値で考えないですよ。「分娩は平均何分くらいだから、もうちょっとで終わる」なんて。

“お母さんには、自分の本能を磨いて、自分を信じて出産や子育てをしてほしいです。”

―確かに。おっしゃる通りですね。

ですから、ここを選んでくれたお母さんは、お産は100%安全ではないことを、しっかり理解しておられます。もし今後、お産の予定のある方がいましたら、女性ならではの本能をしっかり磨いてほしいと思います。今のお母さんは、困ったことがあるとすぐにネットで検索して、答えを出そうとするのですが、ネットは都合の良い情報しか出てこないですし、思考停止になりがちです。

ネットで調べて余計に不安になるくらいなら、散歩に出かけて、草木の揺らぎを感じたり、空や川を眺めたりして、感性を研ぎ澄ましてほしい。それでも不安なら助産所に来て、助産師や他のお母さんに悩みを相談すればいいんです。さかもと助産所は、お母さんが自分のカラダと真摯に向き合うキッカケづくりやサポートができたらと、日々考え、試行錯誤しながら、運営していますよ。

― 「みんなDEランチ」などのサークル活動も、カラダと向き合ってもらうキッカケづくりの一環なのでしょうか?

そうですね。うちの助産所には、栄養士や現役のお母さんもスタッフとして働いています。スタッフの得意分野を持ち寄って成り立っている助産所なんです。決して私が主役ではありません。例えば、「みんなDEランチ」は、栄養士のスタッフが、カラダに良くて美味しい料理を作って、地域に住む親子を呼んでみんなでゆっくりランチをします。

料理の作り方や食材の栄養素について栄養士がお母さんに教えますが、「これが正解だから絶対にやりましょう」という伝え方はしません。その話を聞いて、自分もやってみたいと心から思ってくれたら、実践してくれればいいくらいに考えています。だって、子育てに正解はないんですもん。ですから、何度も言いますが、お母さんが自分の本能を信じて、子育てをしてほしい。それに尽きると思っています。

“今でもお産は怖いです。でも、それ以上の喜びをお母さんと子どもが与えてくれるんです。”

―助産師として長いキャリアをお持ちの坂本さんですが、お仕事をしていて感じる喜びはなんでしょうか?

毎回、怖いですよ。何年やっても慣れることはありません……。年間でお産を担当するのは数人なのですが、それでも予定日の3週間ほど前からは、遠出はもちろんできないですし、お風呂に入っている時もケータイが鳴るんじゃないかとドキドキしています。「えいや!」と開業した助産所ですが「なんでこんな仕事選んじゃったんだろう」と思うこともたまにあります(笑)。でも、それ以上に嬉しいことがたくさんあるんですよね。まず、大事に育ててくれている。それを知るだけで、胸がいっぱいになります。

離婚をしたり、シングルマザーで産んだり、家庭によっていろいろな事情はありますが、それでも、近所で親子が手を繋いで歩いていたり、スーパーで買い物をしていたり、そんな光景を見たときは、子どもを愛してくれているのが伝わってくるので幸せです。また久しぶりにうちに遊びに来て、近況報告してくれるお母さんがいたり、さかもと助産所で産まれた子どもが、大きくなった顔を見せに来てくれた時なんかも嬉しいです。

お産を終えたら、ママさんとの濃密な時期は終わってしまいます。私はそれを「おへその関係」と言っているのですが、へその緒は赤ちゃんがお腹の中にいる時は重要なものですが、産まれたら要らなくなりますよね。でもお母さんは「へその緒」を、タンスにしまって、たまに見たり、妊婦だった頃やお産のことを振り返ったりすると思うんです。だから、子どもが成長してからも、たまにでいいから、さかもと助産所を思い出してくれたら、私が助産師を続けている意義が、少しはあるのかなと感じています。

 

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〈取材・文:寺門常幸/撮影:砂田耕希〉
 

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