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アート

「書」と真摯に向き合い、楽しむこと。そして、常識に捉われない新たな表現で、現代アートとしての価値を高めていきたい。

書家 奥平 将太 (おくだいら しょうた)

Profile
1985年 山梨県生まれ。2010年 大東文化大学大学院修了。第62回毎日書道展大字書部門にて毎日賞受賞(同2012年)。2013年 釜山書芸ビエンナーレに出品。2014年 独立広報115号「漢字の散らし書きについて」発表。于右任没後50年記念日台書画交流展出品。2015年 目黒雅叙園元旦書道パフォーマンス(同2016・2017年)。「奥平将太書展―思索×試作―」。釜山書芸ビエンナーレ招待作家出品。2016年「日本の美術の輸出」展に参加。第21回鈴鹿墨展に参加(同2017年)。2018年 第21回公益信託書奨励基金・國井誠海賞受賞。ART SHODO TOKYO参加。

みなさんは「書道」=「字を綺麗に書くこと」と思っていませんか。実は、符号にしかすぎない文字に芸術的意思を働かせ、生命を与えたものが「書」であり、その作品には、作家の人間性、生き方、思想が反映されており、「文字を素材とする芸術」とも称されています。書家の奥平将太さんは、既成概念に捉われない表現につねに挑戦し書の新たな可能性を追求しています。そんな奥平さんに書の魅力と、書のこれからについてお聞きしました。

 

“「書」の奥深さを知って、本腰を入れて求道したいと思うように。”

―「書道」はいつから始められたのですか?

小学4年生頃から妹と一緒に書道教室に通っていました。でも、書道に本腰を入れ始めたのは中学2年生のときですね。山梨の地元の新聞社が主催の席書き大会(※)があって、それに入賞すると中国旅行に行けるというので、頑張ってみたら賞をいただくことができたんです。他にもコンスタントに色々な賞をいただくことができて、ある程度のコツは、早い段階から掴めたような感触はありました。

でも年齢が上がるにつれて、他の人のレベルも当然上がっていきます。きちんと練習していれば、誰でもある程度は上手に書くことができるんですよ。小学校までの習字って、筆の一部分だけを使えていれば綺麗に書けるんです。

でもそれが、中学生になると、楷書を崩したような「行書」を書くことが求められます。そうなると、筆の色々な面を使って、様々な表情を出すことが必要になってきます。他の人の書を見た時に「こんな表現もあるのか!」という気づきを得たことがあって、奥が深い世界だなと思ったんです。もっと書道を突き詰めたいと考え、高校卒業後は大東文化大学の書道学科に進みました。

※席書き大会:あらかじめ決められた課題に対し、各会場で一斉に同じ条件で書き、無記名で提出する。

 

“根拠と自信を持って、新しい表現にチャレンジすること。”

―奥平さんの「書」の特徴はなんでしょうか。

書道の世界にはいくつも流派があって、僕は独立書人団という団体に属しています。この団体は比較的、前衛的な表現を試みる傾向があるのですが、僕はその中でもさらに新しい表現を追求しています。例えば、中国ではご存知の通り漢字が用いられていますが、文章を書く際は、文頭も文末も揃えて書くのが普通ですよね。行間も等間隔です。でも日本の仮名文字だと文頭を揃えて書く必要もないし、どこで改行しても自由です。

ですから、漢字でもそれを応用してみようと思って、文頭を自由に上げたり下げたり、あとは行間も等間隔にせずに書いてみたんです。思いつきでやっていると思われるかもしれませんが、昔の文献ではすでにそういった書き方がされているんですよ。

だから「あいつなにやってるんだ?」と年長者の方に思われることもあるんですが、そこは過去の事例をもとに自分なりの表現に昇華させているので、自信を持って作品として出しています。

―他にもあれば教えてください。

小学生の頃、書道の授業で先生から「二度書きはダメ」と教えられてことがないでしょうか?二度書きがダメな理由としては、潔くないとか、不自然になるとかがあるんです。あとはその部分がテカるためにバレやすい。

ある時、他の書家の展覧会に行って、二度書きしている部分が不自然にテカっていて、やっぱりすぐにわかったんです。でも「待てよ」と思って。二度書きも、ごまかしで使えば不自然だけど、表現としてあえて使うことで、作品に面白みが出るんじゃないかと思ったんです。それからは二度書きも自分の作風として取り入れるようにしています。

“1000人がダメでも1001人目で評価されるかもしれない。だからこそ、絶対に手は抜かない。”

ー「書」と向き合う中で、いつも意識していることはありますか?

まず僕の作品はあくまで「書」であり「非文字」ではないんです。パッと見で誤解する方がよくいるのですが、きちんと文字や文章を表しています。あとは、先ほども言いましたように、新たな試みに挑戦しているので、作品には賛否がつきまといます。でもそんな時は、ある方に掛けていただいた言葉を思い出すようにしています。「1000人がよくわからないと言っても1001人目の人が理解してくれるかもしれない。だから、絶対に手を抜いてはダメなんだ」と。この言葉は作品を作る上で、とても励みになっています。

 

“現代アートとしての「書」の価値を、もっと高めていきたい。”

―奥平さんが今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。

書の世界は、まだまだ芸術的価値が低いんです。東京藝術大学ですら書道科ってないんですよ……。画廊でも「書」を専門に扱っているところは、かなり少ないのが現状です。そんな中、書道という業界の危うい状況を打破するために、2018年4月に「ART SHODO TOKYO」というイベントが東京・三鷹市で開催されました。

これは書道を現代アートとして認知させていこうという初の試みだったんです。そこに僕も出品させていただいたのですが、日本有数の現代美術コレクターに注目していただくことができました。また数年前には僕の表現の集大成である作品集「思索×試作:奥平将太書展」もつくることができました。これらは、自分の作品をアートとして売り出していくという目標に対しての、いいキッカケになりましたね。

―書の価値を上げるために、尽力していきたいという思いをお持ちなのですね?

そうですね。微力ではありますが、「書」のアート性がもっと認められるために努力していきたいです。なので、機会があれば、広告などのお仕事も受けていきたいです。例えば、商品パッケージやお店の看板、広告ポスターの題字、グラフィックデザインとのコラボレーションなど、書が機能する分野はまだまだあると感じていますし、そのような取り組みを通して、書の認知度や価値も上がっていく気がするんですよね。

でも周りの評価を気にしすぎるばかりではなく、書に対して真摯に向き合うことが一番大切だとは思っています。今は、誰もやっていない表現に挑戦しているという自覚があるので、書に向き合うことが日に日に面白くなっているんです。また自分自身、新たな試みを模索することで、一歩一歩着実に成長しているという実感も得られています。「こんなに書って楽しいんだ!」って、すごくワクワクしながら書くことができているので、その気持ちだけは忘れないように、これからも取り組んでいきたいですね。

 

〈取材・文:寺門常幸(@tera_tsune)/撮影:宇佐美亮(@usamiryo)〉

 

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