ウェディングドレス「Nuance」デザイナー

新婦の魅力を引き立てる。シンプルだけど品を感じるドレスで、結婚式という一度きりのイベントに花を添えたい。

ウェディングドレス「Nuance」デザイナー 大塚 由理 (おおつか ゆり)

Profile
1984年 栃木県生まれ。2005年 歯科技工士の専門学校を卒業後、横浜にて歯科技工士として働く。2006年 横浜にあるセレクトショップにて販売員として勤務。 同年 バンタンデザイン研究所に入学し1年間、服飾デザインについて学ぶ。2007年 東京・千駄ヶ谷にあるアパレルメーカーにてデザイナーとして勤務。2012年 大手アパレルメーカーのデザイナーとして勤務。2016年 ウェディングドレスブランド「Nuance」を立ち上げ、WEBサイトを開設。2017年3月から本格的に活動開始。

Nuance:
神奈川県・鎌倉市にて完全予約制のアトリエを設けています。

数年前からウェディングのスタイルは変化をみせています。大きなホテルで盛大に催す結婚式とは対照的に、親族のみの結婚式や親しいゲストだけを呼んだレストランウェディング、さらには屋外で行うガーデンウェディングなど、アットホームだけどこだわりのある結婚式を挙げるカップルが増えているのです。そして、そんな新婦の感性に響くドレスとして、煌びやかなものではなく、シンプルなドレスが求められるように。2016年にウェディングドレス・ブランド「Nuance」を立ち上げた大塚由理さん。彼女が生み出すのは、大人の女性の品を感じさせつつも、自然体で着られる一着。それは、まさに近年のウェディング事情を見越していたかのように、今、多くの新婦の心に届いています。神奈川県・鎌倉市に構えるアトリエで、ウェディングドレスデザイナーになるまでのことや、ドレスへの思いについてお聞きしました。

 

 “歯科技工士もアパレル販売員も、私の本当にやりたいことではありませんでした。 ”

―社会人になりたての頃の話をお聞かせください。

歯科技工士の専門学校を卒業後、歯医者から請け負って歯を制作する会社に就職しました。ただ、その職場は、とにかくハードワークで、基本的には言われたものを忠実に作ることの繰り返し……。自由度が少なくストレスを感じていたんです。ある休日に横浜でショッピングをしていた時、セレクトショップで販売員の求人を見つけて、直感で、スタッフさんに直談判。すぐに歯科技工士の会社を辞めて、そのお店で働くことにしました。

― 最初から服飾のデザイナーではなかったのですね。

はい、そうなんです。アパレル販売員の仕事は、やりがいは感じていたのですが、心のどこかで、服を「売る」より「作る」仕事がしたい。そう考えるようになっていきました。そんなある時、お店に並んでいた一着のタンクトップが目にとまりました。なんてことのないデザインで「これなら、私の方が可愛いものを作れる」と根拠のない自信が湧いてきたんです(笑)。それで都内にある服飾専門学校に入学。課題が多くて睡眠時間もあまり取れないくらい忙しかったのですが、夢中になれて楽しかったです。「服を作るって良いな」と噛みしめながら学んでいました。

 

 

“服飾デザイナーとして服と向き合い続けた10年間。時代を読む力と売れるデザインを学んでいきました。”

―やりたいことに辿り着いたのですね。服飾の学校を卒業後、アパレルの会社に就職されるのですか?

中規模のアパレルメーカーでデザイナーとして5年働き、その後、大手アパレルメーカーにデザイナーとして転職しました。大手アパレルメーカーは、時代に合わせてどんどん新しい服を作っていくというスピード感のある職場でした。ですから、同僚や上司もみんな流行に敏感で、とても刺激を受けましたね。

― その職場でデザイナーとして成長できましたか?

はい。今流行っている服に対して、一般の人がどんな着方をしているのか、時代のちょっと先をいくブランドに対し、それをどのようにアレンジしたら普遍的なデザインになるのかなど、深く考えるようになりましたし、服と向き合う時間も増えました。また「おしゃれなデザイン」と「売れるデザイン」は違うので、そのバランスを見極める感性は、かなり養われたと思います。ただ、近年はとくにトレンドの移り変わりが著しく速くなっており、それに合わせて消費されていくという、ファッション業界の現状には違和感を覚えるようになっていったのも事実です。

 

“友達の結婚式で作った「一着」が、ウェディングドレスデザイナーの道に進む転機になりました。”

―ウェディングドレスを作るようになったキッカケはなんだったのですか?

3年くらい前に、友達のサプライズ結婚式を挙げるという話があって、私は服飾のデザイナーをしていたこともあって、ウェディングドレスのデザイン担当になったんです。ただ担当になったのはいいけれど、当時は私自身、結婚もしていなかったですし、ドレスの知識なんて全然なくて……。でも制作するにあたってドレスのことをネットや雑誌でいろいろ調べていくうちに、ドレスの面白さに気づいていきました。

―どのような部分に惹かれたのですか?

それまで私の中のウェディングドレスのイメージって、キラキラしていて派手で大袈裟な感じ。正直、私の琴線には触れないと思っていたんです。でも海外のドレスなどを調べていると、本当に様々なウェディングドレスが存在していたんですよね。シンプルなシルエットのものだったり、素材にこだわっていたり、気軽に着られるものだったり。「たくさん種類があって楽しい!」と良い意味でショックを受けたんです。

― そこからウェディングドレスのブランドを立ち上げたいと思うようになったのでしょうか?

そうですね。もともと自分のブランドを持つ夢はありましたが、具体的にどうするのかまでは定まっていなくて……。でも友達のドレスを作ったことで、ドレスの奥深さに惹かれましたし、あとは、友達の式自体も大成功で、ドレスもとても喜んでくれたんですよね。また、別の友達にドレスをデザインしたことを話したら、その友達からも「作って!作って!」とお願いされて、そうして数珠つなぎのように少しずつ依頼が増えていったんです。

それが嬉しくて、ウェディングドレスのデザインを突き詰めていきたいと強く思うようになりました。仕事の合間を縫って休日にデザインをしていたのですが、ホームページをオープンしたりインスタグラムでドレスの写真をアップし始めたりしたら、知らない方からも問い合わせが来るようになって、それで覚悟を決めて2017年に大手アパレルの会社を退職し独立。正式に「Nuance」をスタートさせました。

 

 

“「シンプルだけど品がある。そして、他のドレスとなんか違う」。そんなニュアンスのドレスを目指しています。”

― 「Nuance」ではどんなドレスを作っているのか教えてください。

ドレスのデザインの方向性をどうするか考えた時に、メジャーブランドのお姫様ドレスやインポートブランドのキラキラしたドレスのようなものとはスタンスの異なるものを作りたいと思いました。私自身、シンプルが好きなので、余計な装飾はないんだけど、細かい部分にこだわりがあって、自然体で着られるドレス、さらに大人の女性の品も感じられるものを目指しています。人が見た時に「他のドレスとなんか違うけど、良い!」みたいな感覚的な部分も大切にしていますね。「Nuance」というブランド名もそこから来ています。

 

“細部にとことんこだわり、ドレスに軽やかさと透明感を与えています。”

―具体的にこだわっているポイントもお聞かせください。

軽さを出すことには、かなり気を遣っていると思います。例えば、チュールの下にジョーゼットという薄い素材を一枚重ねることで透明感を演出したり、レースをあえてチュールの下に入れたり、さらには、チュールは目の細かさが違うため、それをあえて二枚重ねにして肌の透け感を調節したりと、ちょっとしたことなんですけど、細部にこだわることで、ドレス全体の印象も大きく変わってくるんですよね。

あとは、結婚式はあくまで新婦さんが主役です。ですから「そのドレスすてきだね」ではなくて、ドレスを着たことによって新婦さんそのものが美しくなるというか、主張しすぎることなく新婦さんに寄り添うような、そんな絶妙なバランスを意識しながらつねにデザインしています。

 

“ インプットした情報を足し算したり、引き算したり、組み合わせたりしながら、発想していきます。”

―ドレスの制作についても教えていただきたいのですが、どのように発想してくのですか?

ウェディングドレスの展示会が毎年8月にあるので、年に3〜5着は新作を生み出すように心がけています。加えてオーダーメイドのご注文もあるので、その時は、都度、お客さまのご要望を汲み取って、「Nuance」らしさを出しつつ、デザインしていきます。新しい一着を作るにあたっては、いつもこの期間に作ると決めて、まずは海外の事例などを中心に情報収集を徹底的にしていきます。このドレスのこの部分は参考にできるなとか、なんでこのドレスに惹かれるんだろうとか、インプットした情報を頭の中で泳がせながら、発想を広げていくイメージですかね。

 

“「やっと見つかった!」「試着が楽しい!」。お客さまの言葉がなにより励みになります。”

― お仕事をされていて嬉しい瞬間はありますか?

お客さまの中には「ドレス迷子」になってしまう方が結構多いんですよ。いろんなドレスを試着しすぎて、もうどれが良いのかわからなくなってしまったという状態です。そういったお客さまが「Nuance」のドレスを試着されて「やっと見つかった!」「今までどれを着ても似合わなくて試着が楽しくなかったけど、やっと今日楽しい!」と言っていただいた時は、本当に嬉しいです。

あとは「Nuance」を選んでくださったお客さまから、式が終わって「みんなに好評でした」「ここにお願いしてよかった」とメールをいただいた時も、救われた気持ちになりますね。やっぱり、自分が心から可愛いと思って作ったものを、お客さまにも心から可愛いと思っていただけることは、私自身、かけがえのない経験になります。

 

“オケージョン・ラインを立ち上げて、お客さまともう一度つながれたら嬉しいです。”

― 最後に今後の目標をお聞かせください。

「Nuance」らしさを失わずに、世の中にないものをきちんと作っていきたいと思っています。お客さまから「こういうドレスが欲しかった」と言ってもらえるような。あとは、今後は、式に参加するゲストのためのドレス、いわゆるオケージョン・ラインも立ち上げられたらいいなと考えているんです。

ウェディングドレスを着るのは基本的に一度きりで、新婦さんとのつながりがそこで終わってしまうのがちょっと寂しいんですよね。オケージョンを作れば、せっかく出会ったお客さまと、またお会いできるので、楽しいと思うんです。

 

 

〈取材・文:寺門常幸/撮影:砂田耕希〉

 

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