イラストレーター

ご縁で生まれた関係を大切にしたいから。新郎新婦のかけがえのないシーンは、心の機微まで感じ取り、熱量を込めて描いていく。

イラストレーター 平山 広一 (ひらやま こういち)

Profile
東京都出身。2000年 都立片倉高校 造形美術コース 卒業。2004年 明星大学 造形芸術学科 卒業。ウェディングやイベントなどで訪れた方々を即興でスケッチする「SNAP SKETCH」や、依頼者の写真とエピソードをもとに人物を描く「STORY SKETCH」でこれまでに多くの人物を描いてきた。人の温度を感じるあたたかみのあるタッチが持ち味。新聞や雑誌、広告の挿絵も手がけている。

その絵には、温度がある。イラストレーター平山広一さんは、365日どんな時も、ペンとスケッチブックを持ち歩き、街ゆく人から大切な人まで、あらゆる人物を即興で描いています。実は、彼の仕事のフィールドはウェディング。結婚式に出向き、新郎新婦はもちろんゲスト全員を一枚の画用紙に落とし込む「SNAP SKETCH」と、新郎新婦のエピソードと写真をもとに、ふたりを描く「STORY SKETCH」。この2つの表現手法で、活躍されています。平山さんが向ける眼差しには、すべてを肯定してくれるような、あたたかさと優しさがあります。そして、シンプルな線の中には、被写体の心の機微までもが映し出されているようです。今回、そんな平山さんに、ウェディングでイラストを描くようになった経緯や絵に対する想いなどについて語っていただきました。

 

“「参列してくれる方々がいなかったら私たちの式は成り立たない」。その声が、僕を結婚式という場に導いてくれました。”

― 結婚式でイラストを描くようになったキッカケを教えてください。

今から7年前くらいでしょうか。友人が主催するイベントに参加した時に、ハガキサイズの紙に、参加者の似顔絵を描いて「500円玉と交換しませんか?」と売り込みのようなことをしていました。で、そのイベントで出会ったある女性が、僕の絵をすごく気に入ってくれたんです。ただ、その時は連絡先までは交換しなかったのですが、イベント後に僕のことを探し回ってくれて、数ヶ月後にSNS経由でメッセージをくれたんです。

その方は都内にある美とカルチャーを発信する複合施設にて、ウェディングプランナーをされている女性で、あるカップルの披露宴の際に、即興でふたりを描いてくれないかと依頼していただきました。ウェディングという一度きりのイベントで絵を描くなんて、自分にできるのだろうかと不安になりながらも、覚悟を決めて、当日はとにかく無我夢中で描かせていただきました。式の終盤、新郎新婦やゲストに完成した絵を見せたら、大きな拍手が起こったんです。

―新郎新婦だけでなく、参列者全員を描くというのも素敵ですね。

それが最初は、すべてのゲストは描いていなかったんですよ。ある時、60名が参列されるお式があって、新郎新婦に「参列者全員を描いてほしい」と頼まれたのが始まりでした。披露宴が行われている間に60もの人物を描くなんて、やったことがないし、無理だと思ったので、「ちょっと厳しいですね」とお断りしていたんです。

でもおふたりは「参列してくれている人たちがいなかったら、私たちの結婚式は成り立たないんです」と熱い想いを吐露されて、「たしかにそうだな」と僕の中でとても納得できたんですよね。それで思い切ってチャレンジすることに。今では、それが僕のイラスト表現の代名詞のひとつになりました。「SNAP SKETCH」と銘打っています。

―「SNAP SKETCH」についてもう少し詳しくお聞かせください。

「SNAP SKETCH」は、先ほども言った通り、依頼していただいたカップルのお式に僕が伺わせていただき、披露宴が行われている間に、新郎新婦はもちろん、参列者全員の席をまわり、お話を伺いながら、スピード感を持って描いていきます。

ゲストに話しかける際は、「きょうの主役はおふたりですが、おふたりがみなさんのことを心からおもてなししたいと思われているので、協力していただけませんか?」というようなことをお伝えします。そうすると、ゲストの表情が柔らかくなり、第三者である僕のことを受け入れていただきやすくなります。お式のエンディングには、完成した絵をオリジナルの額に入れて、新郎新婦にお渡しします。

“その結婚式が良いものになるのであれば、裏方としてなんでもしたいです。”

―とても集中力とエネルギーが必要なお仕事だと思うのですが、「SNAP SKETH」を行う際に心がけていることはありますか?

結婚式そのものが良いものになればと強く思っています。なので、お式の最中は絵を描くだけではなく、僕ができる範囲のことであれば、なんでもさせていただいています。また僕は披露宴の最中は、絵を描くために、つねに会場全体を見回り、観察しています。ですから、ちょっとしたことでも、気づきやすいポジションで現場に携わることができるんです。あるお式でも、お肉料理が出てきた時に、ひとりの女性の表情がわずかに曇りました。さりげなく「どうしました?」と声をかけると、「私、妊婦でミディアムのお肉が食べられないんです」とおっしゃられたので「もう少し焼いてもらいましょう」と返答し、すぐにウェディングプランナーさんにお伝えしました。僕のお式の関わり方は、ウェディングプランナーさんに比べたら短い期間です。ですが、ひとりの裏方として、プロのスタッフの方々を見て、学びながら、目の前のお式を最高のものにするお手伝いができればと考えています。

―他にもありますか?

依頼していただくカップルには、事前にお会いして、本当に僕で良いのかを判断していただくようにしています。ほとんどの方が、すでに僕の絵を見た上で、ご連絡をくれているのですが、それでも「ふたりの大切な式なので一度、僕を審査してくれませんか?」とお伝えするようにしています。とにかく顔を合わせることで、わかることってあると思うんです。また、お会いした際は、僕が今までどんな仕事をしてきたのか、どんな想いでイラストと向き合っているのかを、ざっくばらんにお話させていただき、おふたりが何を求めているかを引き出せたらと思っています。


“普通だと思っているエピソードにこそ、おふたりの素敵なストーリーが隠れています。”

―「SNAP SKETCH」の他に、「STORY SKETCH」というものも行われているとのことですが、これはどういったイラストでしょうか?

「STORY SKETCH」は、依頼をいただいたカップルのお写真と思い出のエピソードを送っていただき、その出来事を詰め込んで、一枚のイラストに仕上げ、額装してお送りします。また、おふたりだけもしくは少人数を描く場合は、サイズをA5かハガキサイズ※にさせていただいています。これは、もし僕が似顔絵を描いてもらう立場だったら、小さ目のサイズの方が、インテリアにマッチしやすくて、飽きずに部屋に飾っておけるだろうなと感じているからなんです。
※初期の「STORY SKETCH」は様々なサイズに対応していましたが、現在はおふたりだけや少人数を描く場合は、A5サイズかハガキサイズのみでお受けしています。

この「STORY SKETCH」は、地方にお住まいのカップルにお話をいただいたのが始まりでした。僕は仕事の都合でその地に行くことが叶わず、お式当日の絵は、描くことができないとわかっていました。それでも描いてほしいということで、新郎さまとお電話で何度かやりとりしていると、実はお父さまが亡くなっていることがわかりました。絵であれば、お父さまを登場させてあげることができると思いました。新郎さんにご家族のことや、おふたりのことをお聞きしていくと、亡くなったお父さんは生粋のプロ野球ファンで、お母さまとデートする時はいつも野球場だったそうなんです。お母さまはもともと野球には興味がなかったけれど、お父さまに球場に連れていかれるうちに野球が好きになって、お父さまが亡くなってからもスタジアムに通うほどのプロ野球ファンになったそうなんです。なので絵では、新郎さまの想いとともに、お父さまのそばには、好きなチームの旧ユニフォームを、お母さまのそばには、今のユニフォームを添えて描かせていただきました。

―素敵なお話ですね。

それからは「STORY SKETCH」を頼んでいただくカップルには、必ずおふたりのエピソードを送ってもらうようにしています。よく「ふつうの話しかないんですけど」とか「こんなエピソードでいいんでしょうか?」と不安になられるカップルもいるのですが、自分たちでは普通だと思っていることが、客観的な視点で見ると全然、普通じゃないんです。そのおふたりにしか生み出すことができない素敵なストーリーばかりなんですよね。

“一期一会の出会いから、関係が続いていく。僕を頼ってくれたり、委ねてくれたりすることが嬉しいから、絵で恩返ししていきたい。”

―「SNAP SKETCH」と「STORY SKETCH」を通しての、平山さんの喜びはなんでしょうか?

一度きりの結婚式やおふたりにとっての大切なエピソードを、僕に委ねてくれる、そして、それを絵というカタチにする。このやりがいはずっと感じています。僕の仕事は、基本的には一期一会の出会いなのですが、ありがたいことに、たくさんのカップルが僕のことを覚えてくれていて、「描いてもらった絵は、こんな風に飾っています」だとか「また絵をお願いしたいです」とメッセージをいただいたり、「今度、うちの地元の近くにきたらぜひ飲みにいきましょう」と連絡をくれて、実際に飲みに行ったりと、一度きりの関係で終わらずに、お付き合いが続いていくことがあって、それはこのうえなく嬉しいことですね。

僕は絵を媒介にして、たくさんの人とのご縁に恵まれてきたと思っていますし、絵と同じくらい人が好きなんです。だから、絵でいただいたご縁は、絵を描くことで恩返しできたらと思っています。また、出会った素敵な人たちは、どんどんいろんな人に自慢したいんですよね。「こんな面白い人がいるんだよ」って。だからこれからも大好きな絵と人とともに生きていきたいですね。

 

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〈取材・文:寺門常幸/撮影:宇佐美亮〉

 

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